東京新聞が2012.5.17及び2012.6.1に、ワタミの残業手続きの不備についての問題を記事にしている。
 (記事は、法的にも的確な指摘になっている)

問題は、
ワタミが全国530店舗で締結している36協定について、
同社には労働組合がないのであるから、店舗ごとに社員や アルバイトの過半数の推薦を得た代表と結ぶことになる(が、)

この過程で、


1) 「店長がアルバイトの中から代表を指名し、 協定届に署名させている」


2) 36協定には「挙手で選出」と書いているが、「実態として行っていなかった」。


など、労働者の過半数代表者の選出に問題があり、労使協定が形骸化している実態を指摘している。東京新聞は、このような実態を捕えて「ワタミフードサービス(東京)が不正な手続きで従業員に時間外労働させていた」と報じている訳だ。


[編注,コメント]

「不正な手続きで従業員に時間外労働をさせていた」(東京新聞)

これは、より厳密には、

「会社にとって36協定の相手方である労働者の過半数を代表する者が、その要件を満たしていない場合、当該36協定が法的効果を持たないこととなり、結果、無効な36協定を根拠として命令された時間外労働は違法残業となる」。ということである。


36協定の形骸化の問題は、深刻である。

この問題は、ワタミだけに限らず、企業の大小を問わず、わが国企業に共通する問題となっている。

労働組合の組織率が低いうえに、わが国では、労使自治、労使協定(労使が話あってものごとを決めていく)の制度が機能しにくい土壌があるようだ。
この問題は労働者の健康確保の課題とも関連する。安全配慮義務との関係からも、法制面の再検討が必要と思われる。






関連情報 (参照してください)


○ 過半数代表の条件を満たさない者との36協定で「違法残業」(書類送検)
  → http://laborstandard.blog82.fc2.com/blog-entry-342.html

○ 三六協定の基礎知識-10のポイント
  → http://labor.tank.jp/sanrokukyoutei.html




(参考)
2012.5.17及び2012.6.1の東京新聞記事を参考掲載します。


【1】 2012年5月17日 東京新聞記事から


残業で不正手続き ワタミ過労死 労使協定形だけ


 「 居酒屋チェーンを展開するワタミフードサービス(東京)に入社二カ月後に自殺した森美菜さん=当時(26)=が、 長時間労働などを理由に過労死と認定された問題で、同社が労働基準法で定められた労使間の手続きを踏まず、 従業員に時間外労働をさせていたことが、会社側への取材で分かった。手続きが形骸化すれば、 経営者側の思うままに従業員側に長時間労働を強いることも可能だ。同様の違反はほかの企業でもみられ、 専門家は「適正な手続きが担保されないと、過労死を助長しかねない」と警鐘を鳴らす。

  この手続きは「時間外労働・休日労働に関する協定(三六(さぶろく)協定)」。 厚生労働省労働基準局監督課は、ワタミフードサービスについて「適正なやり方とは言えず、 労基法に抵触する」と指摘している。 労基法上、時間外労働は禁じられているが、労使間で三六協定を結べば認められる。 三六協定を結ぶには、経営者側は店や工場ごとに労働組合もしくは、従業員の過半数の 推薦で選ばれた代表との合意が必要となる。

  ワタミフードサービスは毎年、「和民」など全国五百三十のチェーン店(四月一日現在)で 三六協定を結んでいる。同社は労働組合が無く、協定を結ぶには、店舗ごとに社員や アルバイトの過半数の推薦を得た代表と合意しなければならない。しかし、実際は違った。

  親会社ワタミの法令順守部門を担当する塚田武グループ長は「店長がアルバイトの中から代表を指名し、 協定届に署名させている」と、手続きが形骸化していたことを認めた。

  同社は全店の協定届に、従業員の代表を「挙手で選出」と明記していたが、 塚田氏は「挙手している前提で記載していたが、実態として行っていなかった」と釈明した。」



【2】 2012年5月17日 東京新聞記事から


労働条件 言うがまま 協定 店長指示でバイトが署名


 「 あらかじめ時間外労働の上限時間が書き込まれた三六協定届に、店長の指示でアルバイトが署名する−。新入社員森美菜さんが過労自殺したワタミフードサービスでは、違法な手続きで、従業員に時間外労働させていた。会社から一方的に提示された労働条件を、受け入れるしかない従業員。労使対等とは名ばかりの実態が浮き彫りになった。
 

  森さんが働いていた「和民京急久里浜駅前店」(神奈川県横須賀市)。この店の三六協定届には、労使協定を結ぶ労働者側の代表は、「挙手による選出」と印字されていた。しかし、男性アルバイトは「協定届を見たことはないし、挙手で代表を選んだこともない」と打ち明ける。
 

  「会社側から三六協定の説明を受けたことはない」。首都圏で店長や副店長を務めた男性(30)も、そう証言する。男性は同意した覚えのない協定届を根拠に、毎月三百時間ほど働いていた。
 

  ある現役店長は「全従業員の意思を確認する時間もない」と明かす。自分の店の時間外労働の上限を知らない店長までいた。
 

  ワタミによると、毎年の協定更新の際、店長が経験の長いアルバイトの中から代表を指名。すでに時間外労働の上限時間が記載された協定届を印刷し、アルバイトが署名をして本社に返送するやり方が常態化していた。
 

  ワタミの辰巳正吉・ビジネスサービスグループ長は「大きな不都合やクレームは起こらなかったので、踏襲してきてしまった」と話している。」
 

【3】 2012年6月1日 東京新聞記事から


<過労社会>和民に労基署勧告 不正な残業是正を


  「 居酒屋「和民」などをチェーン展開するワタミフードサービス(東京)が不正な手続きで従業員に時間外労働させていた問題で、労働基準法に抵触すると判断した労働基準監督署が五月下旬、関東地方の和民など三店舗に是正勧告したことが分かった。

  親会社のワタミによると、是正勧告を受けたのは、二〇〇八年に過労自殺した森美菜さん=当時(26)=が働いていた神奈川県横須賀市の店舗も含まれている。ワタミフードサービスは既に改善報告書を労基署に提出した。

  企業が従業員に時間外労働をさせるには、労働基準法三六条に基づき、労使間で労働時間の上限などについて合意した「三六(さぶろく)協定届」を労基署に提出しなければならない。ワタミフードサービスの場合、店舗ごとに従業員の過半数の同意で選ばれた従業員の代表が、会社側と三六協定を結ぶ必要がある。

  同社の三六協定届には、従業員の代表者について「挙手で選出」と記載されていたが、実際は店長がアルバイトの中から代表を指名する不正なやり方が常態化していた。

  ワタミの担当者は本紙の取材に「今後は、店長が従業員の中から代表を推薦し、書面で過半数の従業員から同意を得る選出方法に改める」と説明した。ワタミフードサービスは六月末までに全店の協定届を出し直す方針。

  ワタミフードサービスの不正な手続きを指摘した本紙の報道を受け、厚生労働省は五月十八日付で全国の労働局に、労基署で三六協定届を受け付ける際、労働者側代表の選出方法について不正な疑いがあれば、窓口で確認を取ることを徹底するよう通達を出した。 」



労務安全情報センター
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http://labor.tank.jp